4月の介護報酬改定の表と裏

1/15に、日本看護協会が「平成21年度介護報酬改定に関する日本看護協会の見解(※PDF)」というニュースリリースを発表した。

内容は、4月からの介護報酬改定で、訪問看護の評価が引き上げられたことを歓迎するというもの。これまでの中重度者や在宅看取りへの評価が手厚くなったことに加え、軽度者の在宅療養に対応する仕組みが新たに設けられた点、特別養護老人ホーム等での看護体制強化への加算が増えた点などである*1

医療崩壊」対策の一環として、舛添厚生労働大臣が取り組んでいた介護報酬の引き上げを、看護師視点で見たものだ。3%では不十分、など色々批判はされているが、かねてからの問題であった介護職員の待遇改善への姿勢は素直に評価したい*2

一方、不穏なニュースを目にした。訪問看護ステーションが指定取り消しになったというのである。参照:「医師の指示書なく看護 目黒の事業所指定取り消しへ」(読売新聞)

恐らく、今回取り消しに遭ったのは特に目立った事業所だったのだろうとは思うが、多くの事業所で多かれ少なかれ同様の事情はあって、今頃戦々恐々としている筈だ。2000年まで遡って査定している点などを併せて考えても、このタイミングは深読みせざるを得ない。

私の脳裏にフラッシュバックしたのは、かつてのコムスン問題だ。介護保険で介護事業が稼げるシステムとなり、多くの業者が参入した。そこで政府の「はしご外し」が行われ、介護事業は儲からなくなった。コムスンは事業維持のため少々無茶な努力をしたが、悪徳業者のラベルを張られ、潰された。

現時点では訪問診療や訪問看護は比較的儲かるシステムになっている。訪問診療をやる診療所や訪問看護ステーションが増えて、ぎりぎり入院*3の患者が在宅療養できるためのお膳立てが整えられると、それを望む患者のためにも良いことかも知れない。

ただ、政策の誘導によるシステムは、また「はしご外し」が行なわれるのでは、という疑念を拭い切れない。この訪問看護ステーションの処分は、同業種に対しての「今後『たとえ経営が悪化しても』一切の不正を見逃さぬ」という表明であり、「あまり儲けることは許さぬ」というメッセージである様に見える。

*1:在宅療養に重きが置かれているところに、実際のニーズとは若干ずれた、厚生労働省的な医療費抑制の意図を感じる。

*2:今や日本看護協会は医師会よりも政治団体として影響力があるので、その意向もある程度反映されたものだとは思うが。

*3:社会的入院も大いに含む。